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映蔵
横浜で活動する記録・広報映像制作会社日映科学映画製作所の作品紹介や、社の周り・横浜情報の発信など。
映画『君の名は。』

年末にようやく『君の名は。』を観た。

こういう爆発的にヒットをした映画を、上映が終わるころに行くと、期待しすぎて
失敗するんだよね。ハードルあがっちゃうから。アニメ『サマーウォーズ』の時も
そうだった。

けど『君の名は。』は面白かった。

新海誠監督作品は映像が美しいのは知られているが、その美しさは単に絵に
よるものだけでなく“日本の心”が感じられるからだ。

自然が残る田舎の風景が美しく描けるのは当然だけど、都会のビル群であっても、
ガラスに青い空と雲を写したり夕日を反射して輝かせたりとか、夕焼けにそびえ
立つ高層ビルのシルエットも美しい。それは監督が感じている日本の美しさや
愛おしさであり、丁寧に描かれた細部からひしひしと伝わってくる。

また、作品中では“片割れ時”という黄昏時(映画界ではマジックアワーと呼ぶ)を
効果的に使い、作品全体をファンタジーとして包み込んでいる。現実にはあり得ない
設定なのに、それほど気にならないのは新海誠監督の魔法でオブラートに包んで
いるからだ。

このブームはおそらく十代、二十代が中心で、もし私が十代か二十代の頃に観て
いたら100点をあげていたかもしれない。けど、五十を超えるとね、世の中そんなに
甘くないよ、という目で観てしまう自分がいるんだ。悲しいかな、素直に受け入れる
ことの出来ない自分が残念でならない。

楽しくて面白かったけど、「面白いからみんな観て!」と他人に薦める程ではなかった。

中学生や高校生のデートに最適!


 --採点 70点。




   *   *  以下ネタバレあり  *   *


kiminonawa.jpg


今までに男女入れ替わり物っていろいろあったけど、多くは大林宣彦監督の
『転校生』のように、一度入れ替わったらずっとチェンジしたままが多かった。
けどこの作品は、しょっちゅう入れ替わる。セリフにもあるが、週3(しゅうさん)
ぐらいの頻度であるようだ。

そのため、それまでの作品にありがちな入れ替わったことへの戸惑いや
悲しみにはそれほど時間をかけず、主人公たちは“夢”だと思いこんで入れ
替わることにむしろ積極的に順応しようとしているところが新しい。だから
テンポも軽快だしギャグも笑える。前半部で作品が重くないのはそのためだ。

また、十代や二十代にウケるのは、男女の入れ替わりとかティアマト彗星の
大接近とか、口噛み酒とかファンタジーの要素が多いが、実は、父親が町長
に立候補して恥ずかしい(三葉)とか、あこがれの先輩とデートが出来るチャン
スを得たのにうまく話せなくて失敗する(瀧)とか、家族や学校、友達、バイト、
恋愛など十代の悩みがテーマとなっているからだと思う。そこに共感できるのだ。

物語のベースが『赤い糸』とか『運命の歯車』とかオーソドックスなのに、
彗星が大接近するという天体ショーを絡めてファンタジーで包み込んでしまう
方便がうまい!

今から20年ほど前のこと、1997年に“ヘールボップ彗星”が大接近し、日本
でも3か月間、肉眼で普通に“ほうき星”を観ることが出来た。それは神秘的で、
宇宙の大きさを感じると同時に、天体ショーのおかげで、それまでとは世の中
が違って見えていたものだ。そんな記憶がよみがえった。おそらく監督も経験
してるのだろう。

ラストシーン。
主人公の二人は遇えるのか? それとも遇えないのか?って気をもまされる
けど、やっぱ、遇ってもらわないとね。遇うとしたらどこでだろうと私なりに観な
がら考えてた。街で歩いていてでは面白味がないし、イベント会場でも周囲の
処理が難しいし、そしたら、電車がたまたま併走して、窓越しにとなりの電車
に乗っていた。ときたからよかったね。都会ならではのシチュエーションだし、
互いが会いに行くという行為が必要になる。観ている観客も、急げ急げって
気持ちが高まる。

ただ残念なのは、二人が同時に「君の名は?」ってユニゾンで言ったのがどう
もね。残念ながら私にはそれがマイナス点だった。大人になった三葉なんだ
から「あなたは?」か、もしくは「あなたの名は?」とか言うだろうし、そもそも
名前を聞こうとするかな? 「君は?」とか「ねえ、君」ぐらいだろう。
タイトルと同じセリフを同時に言わせたところに監督の強い意図を感じてしまい
夢を見ていたのが一気に冷めてしまった。

しかもその後、カメラが空にパンアップして『君の名は。』ってタイトルまで出し
たでしょ。くどすぎる。あのタイトルはいらないと思う。

私だったら、同じセリフではなく、瀧は「ねえ、君」、三葉は「あのう・・・」と違う
セリフをかみ合わせて、カメラが空にパンアップして『君の名は。』ってタイトル
を出したな。

誰かも言ってたけど、もし十代の頃に観ていたら、この作品は宝物になって
いたかもしれない。青臭くとも一途な想い、というのは胸を熱くさせるものだ。
それは青春時代しかできない。

運命の赤い糸、青春ファンタジーの傑作です。

きしょう
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